CAT
猫のウイルス疾患
~猫伝染性腹膜炎(FIP)~
猫伝染性腹膜炎は、
多くの猫の腸に感染する低病原性の
ネココロナウイルス(FCoC)が突然変異し、
主に血液中に移行し血液中の成分(マクロファージ)で増殖します。
感染した猫はウイルスに対して過剰なアレルギー反応をおこし、
全身のいたるところに血管炎を引き起こします。
かつては不治の病でしたが
現在は猫伝染性腹膜炎に関しての
治療法は確立されつつあります。
予防に関しても研究が進められています。
発症は生後半年~3歳に多くみられますが
高齢でも見られます。
コロナウイルス感染の猫ちゃんの中でも
数%の発症とされていますが、
いったん発症すると完治するまで
辛抱強く治療する必要があります。
治療法が確立されつつありますが
まだまだ手探りの段階であり、
再発にも注意が必要です。
◆原因
ネココロナウイルスの突然変異による。
突然変異の要因としては、
多頭飼育や飼育環境によるストレス、
猫エイズ・猫白血病ウイルスなどの
免疫異常を引き起こす病気が関与していると言われています。
猫伝染性腹膜炎を発症した猫ちゃんから
健康な猫ちゃんへの感染(水平感染)は
ウイルスのタイプによっては確認されていますが
基本的には一般的ではありません。
◆病型と症状
多くの臓器が侵されるため、
元気消失・食欲不振・体重減少(特に幼若期)など、
様々な原因不明の症状がみられます。
猫伝染性腹膜炎の病型には主に2つのタイプに分けられます。
①ウェットタイプ(滲出型)
発症した猫ちゃんの大部分がこのタイプです。
元気消失・食欲不振・発熱・腹部膨大などがみられ、
呼吸困難・貧血・脱水・黄疸・下痢などがみられることもあります。
②ドライタイプ(非滲出型)
主に眼や神経系に症状を出します。
眼に症状がでると白く濁ったように見えたりします(前ぶどう膜炎)。
神経系に障害が出るとその病変部位により様々な症状
例えば眼球が揺れたり、異常行動を起こしたり、
痙攣、後ろ足の麻痺、旋回運動など
いろいろな神経症状を起こします。
その他、黄疸(2歳未満で多く見られます)、
腹部腫瘤なども見られることがあります。
◆診断
他に同じような症状を呈する病気を除外し、
主に症状から猫伝染性腹膜炎を疑います。
最近では血液や腹水を採取し、
遺伝子を検査する診断方法が確立されていますが、
診断精度は100%ではないので
臨床症状と合わせて総合的に診断します。
ドライタイプでは腹水が溜まりにくいため
診断が困難な場合があります。
◆治療
猫伝染性腹膜炎の治療法は
特定の抗ウイルス薬によって確立されてきています。
ただし、比較的金銭的な負担が大きな治療となります。